Ugly Road Demos/Fabricio Moraes(2015)

Ugly Road Demos/Fabricio Moraes(2015)


ファブリシオ・モラエス(と読むのか)は,アルゼンチン在住のミュージシャン。少しポストロック的な南米風味のロックといった感じのアルバムを何枚かダウンロード販売している,10年近くキャリアがあるようである。

そのようなモラエス氏は,カバー曲の達人でもあり,これまで,ニール・ヤング渚にて」全曲カバーとか,ジョージ・ハリスンクラウド9」収録曲カバーとか,非常に趣味的なカバー曲集を発表している。

その中でも,このアルバムは,モラエス氏がUgly Roadというバンドを結成し,ソロ時代を中心としたジョン・レノンの楽曲を演奏するというプロジェクトのデモ音源集であり,前述のカバー曲集が宅録もしくはスタジオセッションだけであるのと異なり,気合の入れようが違うと見受けられる。

バンド演奏のいくつかはYoutubeでも公開されているが,モラエス氏の独特の線の細い声を殺すことなく,各楽曲に込められたテーマなりを深く掘り下げ,バンドと一体となって心地よく演奏しているのが手に取るようにわかり,私にとってはとても素晴らしいアルバムである。ビートルズのカバーというと,いずれもオリジナルが確固たる軸となって,これにいかに近づくかか,いかに遠ざかるかでしか評価される傾向にあると思うし,演奏する側も確固たるオリジナルの重みに負けそうになっている。

ところが,モラエス氏のバージョンは,まあ,自分が勝負しやすい楽曲を選んでいるということもあるが(残念ながら,ジョン・レノンロックンローラーの資質をモラエス氏は持ちあわせていない。なので,スターティング・オーバーなどはかなりヘロヘロである),ブレス・ユーなどは,モラエス氏の衒いのなさが却ってオリジナルを超えたようにも聞こえるし,ユー・アー・ヒアのトロピカルさなどはさすが南米人といった感じである。

Bandcampで言い値で帰るので,こういうミュージシャンを応援するのもたまにはよいのではないだろうか。

 

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